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藤田 善貴
JAEA-Review 2023-010, 108 Pages, 2023/08
Tc(テクネチウム-99m)は核医学検査薬として最も多く使用されているラジオアイソトープであり、親核種であるMo(モリブデン-99)から生成される。Moの大部分はウランの核分裂生成物の一つとして生成されるが、近年、核セキュリティや核不拡散の観点からウランを用いないMo製造方法が望まれている。その方法の一つが、Moに中性子を照射する(n,)法である。しかし、この方法で生成されるMo比放射能は極めて低いため、MoからTcを分離濃縮する装置であるMo/Tcジェネレータへ適用するには、Mo吸着材として使用されるアルミナ(AlO)のMo吸着およびTc溶離性能の向上が必要である。そこで本論文では、(n,)法を利用したMo/Tcジェネレータの実用化のため、アルミナの性能向上に有効なパラメータを解明し、低比放射能のMoに適用可能性のあるアルミナカラムの開発に貢献することを目的とする。本研究では、始発原料の異なるアルミナを作製し、Mo/Tcジェネレータ用のMo吸着材としての適用性を評価した。アルミナの結晶構造および比表面積がMo吸着特性へ及ぼす影響を明らかにするとともに、アルミナの表面分析結果に基づきMo吸着機構を解明した。また、京都大学研究用原子炉(KUR)で照射したMoOを使用してTc溶離特性およびTc溶液の品質を評価し、現行のジェネレータを想定したアルミナカラムの試験結果からジェネレータへの適用可能性のある新たなカラム形状を提案した。これらの結果は、(n,)法を利用したジェネレータの実用化のためのアルミナカラムの開発に貢献する。
藤田 善貴; Hu, X.*; 武内 伴照; 武田 遼真; 藤原 靖幸*; 吉永 尚生*; 堀 順一*; 鈴木 達也*; 末松 久幸*; 井手 広史
KURNS Progress Report 2022, P. 110, 2023/07
ウランを使用しないテクネチウム-99m(Tc)の国産化を目的に、(n,)法によるモリブデン-99(Mo)製造に関する研究を行っている。この方法で生成されるMo比放射能は低いことからMoの娘核種であるTcを濃縮するため、メチルエチルケトン(MEK)を用いた溶媒抽出法によってTcを抽出し、アルミナカラムによってTcを濃縮する技術に着目した。還元されたTcはMEKに抽出されないとの報告があることから、本試験では、モリブデン酸ナトリウム水溶液への水素バブリングによるTc還元を試み、Tc収率への影響を調査した。その結果、論文で報告されたMEKへのTc抽出に対する影響は確認されず、酸性カラムへのTc吸着を阻害する可能性が示された。また、Tcの化学形を把握するための基礎的データとして、回収したTc溶液のラマン分光分析を実施した結果、1050cmあたりにシャープな弱いピークが確認された。今後、Tcの還元を確認するため、Tcの化学形の違いによるラマンピークの違いなどを調査していく。
藤田 善貴; 関 美沙紀; Ngo, M. C.*; Do, T. M. D.*; Hu, X.*; Yang, Y.*; 武内 伴照; 中野 寛子; 藤原 靖幸*; 吉永 尚生*; et al.
KURNS Progress Report 2021, P. 118, 2022/07
核セキュリティ等の観点から放射化法((n,)法)によるMo製造の研究開発が進められている。この方法をMo/Tcジェネレータに適応するためには、Mo吸着材として用いられるアルミナ(AlO)の特性改善が不可欠である。これまで、開発したAlO試料から得られるTc溶液の品質を評価してきたが、溶液中へのMo脱離が課題だった。本研究では、市販のジェネレータを模した形状のカラムにAlO試料を充填し、Mo脱離低減のためのいくつかの措置を施してTc溶液の品質を評価した。以前実施した、AlO試料をMo溶液に浸漬させる静的吸着の条件と比較した結果、Mo溶液をAlOカラムに流す動的吸着の適用、Mo溶液の高濃度化、Mo添加量の低減によりMo脱離量が大幅に改善された。したがって、吸着方法および吸着条件の最適化による品質向上の可能性が示唆された。今後、本結果に基づきカラム形状およびMo吸着条件の最適化を図る。
つくば特区プロジェクト6会合メンバー
JAEA-Review 2021-016, 102 Pages, 2021/11
2011年12月に内閣総理大臣によって「総合特別区域」につくば市と茨城県内の一部の地域が指定された。つくば国際戦略総合特区では、つくばの科学技術の集積を活用したライフイノベーションやグリーンイノベーションの推進による産業化を推進することを目的とし、9つの先進的な研究開発プロジェクトが進められている。その中で、核医学検査薬(テクネチウム製剤)の国産化は、2013年10月に新たなプロジェクトと認定され、日本原子力研究開発機構をプロジェクトリーダーとして、関係機関と連携して研究開発を実施している。日本は、米国、欧州に次いでモリブデン-99(Mo)の世界第3位の消費国であるにもかかわらず、そのすべてを輸入している。海外の製造用原子炉のトラブルによる停止や、火山噴火や事故による輸送(空輸、陸送)の停止により、供給が不十分になることから、早期の国産化が強く求められている。本プロジェクトは、診断薬として用いられている放射性同位元素のテクネチウム-99m(Tc)原料であるMoの国産化を目指した技術開発である。本報告書は、第12期計画(20142020年度)に行った活動をまとめたものである。
藤田 善貴; 関 美沙紀; 滑川 要二*; 西方 香緒里; 加藤 佳明; 佐谷戸 夏紀; 土谷 邦彦; 佐野 忠史*; 藤原 靖幸*; 堀 順一*; et al.
KURNS Progress Report 2019, P. 157, 2020/08
高濃縮ウランの利用低減や核不拡散及び核セキュリティ、核分裂生成物の処理の観点から放射化法((n,)法)によるMo-99(Mo)製造の研究開発が進められている。この方法をMo/Tcジェネレータに適用するためには、Mo吸着剤として広く用いられているアルミナ(AlO)の特性改善が必要不可欠である。本研究では、4種類のAlO試料をそれぞれPFAチューブに充填したカラムを準備し、照射済MoOペレットを溶解したモリブデン酸ナトリウム水溶液(Mo溶液)を流すカラム吸着(動的吸着)によるMo吸着およびTc溶離特性を評価した。また、2019年度実施したAlO試料をMo溶液に浸漬させるバッチ吸着(静的吸着)による評価結果と比較した。その結果、動的吸着では静的吸着に比べてTc溶離効率の向上、Mo脱離量の減少が確認された。これは、AlO試料を細長いチューブに詰めることにより、溶液との接触が均一になったこと、接触時間が長くなったことが原因と考えられる。今後、カラム径や線流速によるTc溶離およびMo脱離に与える影響を調べる。
藤田 善貴; 関 美沙紀; 滑川 要二*; 西方 香緒里; 木村 明博; 柴田 晃; 佐谷戸 夏紀; 土谷 邦彦; 佐野 忠史*; 藤原 靖幸*; et al.
KURNS Progress Report 2018, P. 155, 2019/08
高濃縮ウランの利用低減や核不拡散及び核セキュリティ、核分裂生成物の処理の観点から放射化法((n,)法)によるMo-99(Mo)製造の研究開発が進められている。この方法をMo/Tcジェネレータに適用するためには、Mo吸着剤として広く用いられているアルミナ(AlO)の特性改善が必要不可欠である。本研究では、4種類のAlO試料を準備し、照射済MoOペレットを用いてMo吸着およびTc溶離特性を評価した。また、Mo濃縮率の異なる3種類のMoOペレットを照射して、生成されるMo比放射能を比較した。その結果、Mo吸着量はV-B-300が最も優れているとともに、Tc溶離率も約80%と比較的高く、得られるTc溶離量が最も多いことを明らかにした。Mo濃縮率比較では、58.82%の濃縮ペレットで予想放射能量に近かったのに対して、98.5%以上の濃縮ペレットでは予想よりも小さい比放射能が得られた。今後、より高精度な実験方法を検討する必要がある。
福光 延吉*; 山内 悠輔*; Saptiama, I.*; 有賀 克彦*; 籏野 健太郎*; 熊田 博明*; 藤田 善貴; 土谷 邦彦
Isotope News, (760), p.15 - 18, 2018/12
核医学検査薬として最も多く使用されているTcの原料となるMoは我が国ではすべて輸入に頼っており、安定供給のためMo/Tcの国産化が望まれている。天然Moを中性子照射してMoを生成することは技術的には可能であるが、比放射能が低いことから、現在Mo/TcジェネレータのMo吸着剤として用いられているアルミナの吸着性能向上が期待される。そこで、本研究ではメソポーラス技術を適用して表面積を増加させた新規アルミナの開発を進めている。アルミナは2通りの方法で合成し、一方はアルミナ-シリカ複合体でアルミナ/シリカ分子比及び焼成温度を段階的に変化させて合成する方法、一方がエタノール処理で焼成時間及び焼成温度を段階的に変化させて合成する方法である。本解説は、これらのメソポーラス加工を応用した新規アルミナの研究成果についてまとめたものである。
藤田 善貴; 西方 香緒里; 滑川 要二*; 木村 明博; 柴田 晃; 佐谷戸 夏紀; 土谷 邦彦; 佐野 忠史*; 藤原 靖幸*; Zhang, J.*
KURRI Progress Report 2017, P. 126, 2018/08
高濃縮ウランの利用低減や核不拡散及び核セキュリティ、核分裂生成物の処理の観点から放射化法((n,)法)によるMo-99(Mo)製造の研究開発が進められている。この方法をMo/Tcジェネレータに適用するためには、Mo吸着剤として広く用いられているアルミナ(AlO)の特性改善が必要不可欠である。本研究では、2種類のAlO試料を準備し、照射済MoOペレットを用いてMo吸着およびTc溶離特性を評価した。その結果、Mo吸着量は未照射のMoOペレットを用いた試験での値と同等であるとともに、Tc溶離率は既存の医療用アルミナよりも開発したアルミナの方が優れていることを明らかにした。一方で、Mo生成量は熱中性子のみから計算される値と大きく差があり、熱外中性子や高速中性子からの寄与も大きいことが示唆された。
石田 卓也; 鈴木 善貴; 西方 香緒里; 米川 実; 加藤 佳明; 柴田 晃; 木村 明博; 松井 義典; 土谷 邦彦; 佐野 忠史*; et al.
KURRI Progress Report 2015, P. 64, 2016/08
医療診断用アイソトープであるTcの親核種である(n,)法を用いたMoの製造を計画している。2014年にKURで照射した高密度MoOペレットをJMTRホットラボに持ち込み、Moから核変換により生成したTcを溶媒抽出法により抽出した。本研究では、得られたTcの回収率評価及び品質検査を行い、溶媒抽出法によるMo/Tc製造工程を実証するとともに、得られたTc溶液の品質が基準値を満足するものであることを明らかにした。
土谷 邦彦; 西方 香緒里; 木村 明博; 石田 卓也; 竹内 宣博*; 小林 正明*; 河村 弘
no journal, ,
放射化法によるMo/Tc製造開発の一環として、プラズマ焼結法による高密度MoOペレット(目標焼結密度: 9095%T.D.)の製造方法に着目し、(n,)法による照射ターゲットの製造技術開発を行い、MoOペレット製造特性に与えるMoO粉末の影響及び開発した高密度MoOペレットの照射特性を調べた。この結果、焼結温度がMoO粉末特性(平均粒子径及び2次粒子の存在)に影響していることが分かった。次に、照射済MoOペレットの照射後試験により、低中性子照射量では、照射済MoOペレットの粒子径は、未照射MoOペレットと比べほぼ同程度の大きさであること、結晶構造に大きな変化がないことが分かった。さらに、溶解したMo溶解液中のMo放射能を測定し、Mo生成量評価には全中性子エネルギーを考慮する必要があることも分かった。
土谷 邦彦
no journal, ,
放射性同位元素であるモリブデン-99(Mo)の娘核種であるテクネチウム-99(Tc)は、体内の特定部位に集積する性質を有する薬剤と結合させ、テクネチウム製剤として利用されており、がんの診断や脳・骨・心筋の血流の精密検査などの診断用医薬品として80%以上を占めている。医療大国である日本はMoの消費量では米国、欧州に次ぐ世界第3位の消費国であるにもかかわらず、全量を海外からの輸入に頼っていることから、このような原子炉の停止や空路輸送障害の影響を大きく受ける。こうしたMo供給不足への対応として国内生産の要望が強まり、つくば国際戦略総合特区のもと、材料試験炉JMTRを用いたMo/Tc国産化のためのプロジェクトが実施されている。本発表は、本プロジェクトの紹介を行う。
土谷 邦彦
no journal, ,
放射性同位元素であるモリブデン-99(Mo)の娘核種であるテクネチウム-99(Tc)は、診断用医薬品の80%以上を占めている。日本のMo消費量は、欧米に次ぐ世界第3位であるにもかかわらず、Moの全量を海外から輸入している。このため、Moを製造している限られた原子炉の停止や空路輸送の障害等により、患者への診断に大きく影響を受けることとなる。こうした背景の中、Moの安定供給に向けた対応として国内生産の要望が強まり、内閣府での安定供給に向けた官民による検討等の結果、国内の試験研究炉(原子力機構のJMTR(材料試験炉)など)を用いたMo国産化のための技術的実証を早急に行うことが必要となった。(n,)法によるMo製造の課題は、核分裂法と比較して、比放射能(単位質量あたりの放射能の強さ)が低いことである。このため、産学官連携の元、「照射ターゲットの開発」、「Mo/Tcの分離・抽出・濃縮法の開発」、「Moリサイクルの開発」及び「品質確認」を行い、これらの技術開発を総合した実証試験を行う計画となっている。本発表では、これらの技術開発の現状について紹介する。
関 美沙紀*; 末松 久幸*; 中山 忠親*; 鈴木 常生*; 新原 晧一*; 鈴木 達也*; 土谷 邦彦; Duong Van, D.*
no journal, ,
テクネチウム-99m(Tc)は、核医学検査として世界で広く用いられており、放射化法によって製造する計画がある。照射ターゲットとして、三酸化モリブデン(MoO)が使用され、水酸化ナトリウムで溶解し、分離することが考えられている。本研究では、MoOから直接純水で抽出する方法を考案し、その特性を調べた。その結果、照射したMoOの純水への溶解率は16.7%と、未照射MoOより高くなることを明らかにした。
土谷 邦彦
no journal, ,
「つくば国際戦略総合特区」は、平成23年12月に国からの特区指定を受け、最先端科学技術を活用したイノベーションの創出と産業化に取組んでいる。プロジェクトの一つとして、「核医学検査薬の国産化」が平成25年10月に追加され、原子力機構、大学及び関連メーカと基礎基盤研究を実施している。本成果発表会において、本プロジェクトの概要、これまでの成果及び今後の取組みについて報告する。
土谷 邦彦; 柴田 徳思*; 宇野 毅*; 長谷川 良雄*; 掛井 貞紀*; 福光 延吉*; 楠 剛; 神永 雅紀
no journal, ,
放射性同位元素は、医療, 産業など幅広い分野で使用されている。本発表では、放射性同位元素のうち、核医学検査薬として80%以上で使用されているTcの親核種であるMoをウランを用いない放射化法((n,)法)で製造する研究開発の現状について報告する。本取り組みは、つくば国際総合戦略特区プロジェクトとして、産学官協力体制のもと進められているものである。